日本で味わうフィリピンの日常。いつもの食堂とブコジュース
連日続く猛暑日。友人が私の行きつけのフィリピンレストランの「ハロハロ」が気になっていると言うので、一緒に訪れることにしました。
その店は、一見の日本人客はほとんどいません。客層はフィリピン出身の方か、近くの米軍基地関係者で、ドアを開ければ、そこはもう日本の日常から切り離された異国の空間です。
いつもはサンミゲルを頼むのですが、メニューでたまたま目に入った「ブコジュース」が気になりました。マスターに尋ねるとココナッツジュースだと教えてくれたので、せっかくなので私たちの一杯目はそれに決めました。
白いのがココナッツの果肉で、加糖され飲みやすくなっています。
そして、甘辛く焼かれたソーセージ(名前は忘れてしまいました)と、
彼女がセブで振る舞ってくれた思い出の味、ナスのオムレツ「トルタンタロン」を注文しました。
料理が運ばれてくる頃には空席だった店内も満席に。タガログ語と英語が飛び交う中、私たちはフィリピン料理の定番「シシグ」を追加しました。これにはやはり、サンミゲルが欠かせません。濃い味付けの豚肉と、キリっと冷えたビールの組み合わせは最高のひと言です。
日本にいながら、聞こえてくるのは外国語ばかり。ただ食事をするだけでなく、こうした「非日常」を味わえるのが、この店の最大の魅力なのです。
勇気を出した一言から始まった、片言の英会話
ふとしたきっかけで、隣の席に座った恰幅のいい男性と、私たち、そしてマスターを交えて会話が始まりました。彼はこの店の常連で、マスターの友人でもあるようです。米軍関係者だという彼は、幸いにもゆっくりと話してくれたので、私の初心者レベルの英語でもなんとか聞き取ることができました。

彼の奥様はフィリピン出身で、沖縄で勤務していた時に知り合ったのだとか。そんな話をしているうちに、この日のメインディッシュ「ハロハロ」が運ばれてきました。 かき氷とアイス、フルーツやゼリーが混ざったフィリピンの定番デザートを味わいながら、私は片言の英語で会話を続けました。
完璧な文章ではない。時々、単語が思い出せずに詰まってしまう。それでも、伝えようとすれば相手は理解しようとしてくれる。そして、会話が成立する。
この小さな成功体験が、私にほんの少しの自信をくれました。机の上で勉強するだけでは得られない、生きたコミュニケーションの喜び。英語学習へのモチベーションが、また一つ増えた瞬間でした。
「一大決心」は不要。マスターが教えてくれた海外移住の新常識
その日は珍しく、レストランのマスターが私にいろいろと話しかけてくれました。彼は私がフィリピン人の彼女と付き合っていることも知っています。その流れで、私がいずれセブへの移住を考えていることを話すと、彼は自身の経験から、非常に参考になるアドバイスをくれたのです。
これまで私は、健康保険や税金といった制度面について情報収集を進めていました。しかし、彼の視点は全く違うところにありました。
「大事なのは、いつでも移住できる状態を先に作っておくことだよ」
これは、私にとってまさに目から鱗が落ちるような一言でした。
重要なのは「いつでも移住できる状態」を整えておくこと
「海外移住」と聞くと、仕事を辞め、家を引き払い、すべてを清算して飛び立つ、というような「一大決心」をイメージしがちです。しかし、マスターのアドバイスは、その固定観念を覆すものでした。
彼が言う「いつでも移住できる状態」とは、物理的な拠点を先にフィリピンに作っておく、ということ。例えば、コンドミニアムを先に購入してしまう。そして、しかるべきタイミングが来たときに、いつでも移住できるようにしておく。
「一大決心」をゴールにするのではなく、「準備が整ったから、あとは行きたい時に行くだけ」という状態を作り出す。この発想の転換は、移住への心理的なハードルを大きく下げてくれました。
具体的な準備とは?日本を拠点に今からできること
マスター自身、すでにフィリピンへの移住準備が完了しており、あとは自分たちのタイミングを待つだけなのだそうです。
なるほど、日本での生活を続けながら、定期的にセブを訪れ、そういった物理的な準備を少しずつでも進めていく。これなら、今の生活を大きく変えることなく、夢に向かって具体的な一歩を踏み出せます。
同じ方向を向いている人や、すでに経験している人のアドバイスには、素直に耳を傾けるべきだと改めて感じました。世の中には、人の夢を否定する「ドリームブレーカー」もいますが、本当に価値があるのは、こうした実体験からくるリアルな知恵です。
新たな視点を得た夜
行きつけのレストランで過ごした、いつもと同じようで、いつもとは全く違う一夜。
そこで得られたのは、片言の英語が通じた小さな自信と、そして何よりも、「海外移住」という漠然とした夢を具体的なプロジェクトに変えてくれる新しい視点でした。
遠い未来の大きな目標ではなく、今から始められる「準備」として捉え直す。そう考えただけで、夢への距離がぐっと縮まった気がします。
人生を変えるような大きなヒントは、特別な場所ではなく、意外と身近な「いつもの場所」に隠されているのかもしれません。私の次の課題は、この新しい計画を元に、次回のセブ訪問で何を見るべきか具体的にリストアップしていくことです。夢はもう、ただの夢ではありません。