与謝野晶子も愛した元料亭旅館で過ごす、静寂の朝

金澤園で過ごす朝

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先週末の朝、横浜市金沢区にある「カフェ金澤園」を訪れました。 国登録有形文化財に指定されている元料亭旅館の建物を活用したカフェです。

普段はリモートワーク中心の生活を送っており、休日も同様に静かな環境を求めます。今回は混雑を避けるため、開店時間に合わせて訪問しました。

昭和初期の建築「金澤園」の歴史と立地

金澤園の所在地は横浜市金沢区柴町です。現在は静かな住宅街の一角に位置していますが、敷地内には昭和初期の古い建物がそのまま残されています。

この建物は昭和5年(1930年)に建築されたもので、当時は料亭旅館として営業していました。記録によると、かつてこの近くにあった海軍航空技術廠、通称「空技廠(くうぎしょう)」の指定旅館だったとのことです。

空技廠は日本の航空技術を研究していた機関です。当時の技術者や将校たちがこの場所を利用していたという事実は、この建物が持つ歴史的な文脈の一つと言えます。

また、この場所は歌人・与謝野晶子が利用したことでも知られています。彼女がこの地を訪れ、歌を詠んだという記録が残っており、軍関係者だけでなく文化人にも利用されていたことが分かります。

建物自体は数寄屋風の造りとなっており、古いガラス窓など、当時の建築様式が保存されています。 現在は周囲を住宅に囲まれていますが、かつて金澤園の目の前はすぐ海でした。東京湾を望む保養地として機能していたそうです。埋め立てにより海岸線は遠のきましたが、高台にあるこの建物からは、かつての地形を推測することができます。

ボランティアガイドとの対話と2階の散策

今回は開店時間の8:30に合わせて到着しました。

開店を待っている際、この地域で歴史案内のボランティアをしているという男性に話しかけられました。この後、この場所を使って歴史講義を行う準備をされているとのことでした。

私は以前から近代史に関心があり、書籍等で情報を得ていました。そのことを伝えると、男性はこの周辺にかつて存在した軍関係の施設について説明してくれました。かつて旧軍について調べている人たちの交流があったこともあり、話が進みました。

そうこうしているうちに開店時間となり、入店しました。私の他には近所の住人と思われる客が数名いる程度でした。

注文は事前会計制です。朝の時間帯はモーニングセットかタルトセットが選択可能で、今回はモーニングセットを注文しました。

食事の提供まで少し時間がかかるとのことだったので、許可を得て2階を見せてもらいました。急な階段を上がると、かつて客室として使われていた大広間や、宿泊客が就寝していたという奥の部屋が残されています。

先ほどのボランティアの男性も2階の広間で講義の準備をしており、ここでも少し言葉を交わした後、席に戻り、注文したモーニングをいただきました。

静寂を優先

食事を済ませた後、撮影し忘れていた箇所があったため、再度2階へ上がり写真を数枚撮りました。

帰り際、ボランティアの男性から「これから講義をやるから参加しないか」と誘われました。興味深いテーマではありましたが、丁重にお断りしました。
講義に参加すれば参加者が増え、その中でのコミュニケーションが発生します。私は知識を得ることと同様に、一人で静かに過ごす時間を重視しています。

以前の私なら、場の空気を読んで無理に参加していたかもしれませんが、誰かの期待に応えることよりも自分の心の平穏を優先できるようになったのは、少しだけ生き方が上手くなった証拠なのかもしれません。

今回は、歴史ある建物で静かに朝食を摂るという目的を果たし、そのまま帰路に着きました。

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