土曜日の早朝、私はカメラを片手に北鎌倉駅に降り立ちました。目的は、明月院の紫陽花。この時期の明月院は、大変な賑わいを見せます。
HSP気質で人混みを何よりも避けたい私が、なぜわざわざそんな場所へ向かうのか。それは、ファインダー越しに美しいものを切り取るという、ささやかな欲求が心の中に確かにあるからです。誰のためでもない、自分自身が満足するために...。
私が現地に到着したのは、開門時間の30分ほど前でしたが、すでに列ができていました。ノイズキャンセリングイヤホンで外界の音を遮断し、音楽を聴きながら静かに開門を待ちました。
門が開き、境内へ。まだ人の少ない参道で、私はシャッターを切り始めました。
紫陽花は満開には少し早い印象でしたが、写真に収めるには十分だと感じました。凛とした空気に映える「明月院ブルー」。その青のグラデーションを、一つひとつファインダーで捉えていきました。
今使っているカメラは、もう10年近く使っている旧式の一眼レフ。機材の更新も考えたこともありましたが、自分の意図を忠実に写し取ってくれるこの相棒がいれば、それで十分。私が撮りたいのは、SNSで「いいね」をもらうための写真ではなく、私自身が心から美しいと感じた、その一瞬の記録なのですから。
約1時間半、黙々と紫陽花と向き合いました。
しかし、人の気配が濃くなるにつれ、私は疲労を感じるようになりました。体が「もう限界だ」と信号を出す前に、自ら退く。これも穏やかな日常を守るための、私の処世術です。
明月院を後にし、駅へ向かう道すがら、ふと趣のあるお店が目に入りました。
「とろん。」と書かれたアイスキャンディーの案内に足が止まります。
選んだのは、みかん味。火照った体に、ひんやりとした柑橘の酸味と、果物本来の優しい甘みが染み渡ります。
余計なものが一切ない、実直な味わい。人混みで感じた疲労が、和らぐのを感じました。
年々、人混みは苦手になっています。写真撮影に対して、かつてのような情熱はありません。しかし、体が拒絶しない限り、美しいものを撮りたいという欲求がある限り、私はこれからも同じように行動するでしょう。