マクタン・セブ国際空港に降り立った瞬間、あの独特な熱気を帯びた空気に包まれました。何度訪れても、日本からの"逃避行"が始まったことを実感させられます。
入国審査の列に並びながら、これから始まる日常と非日常が入り混じる日々へと思いを巡らせていました。
幸いにも、入国手続きもスーツケースの受け取りも、驚くほどスムーズに終わりました。
再会と、いつもの場所へ
空港に着いてすぐ、グローバルWiFiの電源を入れました。スマホが通知を拾い始め、彼女からのメッセージが画面に表示されました。
「前回と同じ場所で待っててね」
前回と同じ場所で、タクシードライバーの声かけを断りながら待っていると、白いタクシーがゆっくりと近づいてくるのが見えました。後部座席には、にこやかにこちらを見ている彼女の姿がありました。
荷物をトランクに積み込み、タクシーに乗車しました。彼女がすでに行き先を伝えてくれていたため、タクシーはそのままコンドミニアムへ向かいました。セブに戻ってきたという実感が強まりました。
車窓の外には、いつもと変わらないエネルギッシュな混沌が広がっていました。
仕事場となるコンドミニアム
今回予約したのは、マクタン島にあるコンドミニアムです。いくつか同じような建物が立ち並ぶ集合アパートのような印象でした。
部屋のタイプは「スタジオ」。日本でいうワンルームに近い間取りですが、こちらでは単身者向けの一般的な区分のようです。
以前、不動産情報サイトで調べた限りでは、セブのコンドミニアムは主に「スタジオ」「ワンベッド」「ツーベッド」の3種類に分かれているようでした。
リビングと寝室が明確に分かれている日本の1LDKにあたる間取りは、こちらでは「ワンベッドルーム」と呼ばれ、ややラグジュアリーな位置づけになるのかもしれません。こうした違いからも、国ごとの住まいに対する価値観の差が垣間見えて、興味深く感じました。
部屋に入ると、コンパクトながらも機能的にまとめられた空間が広がっていました。キッチンスペースのすぐ横にダブルサイズのベッド、その間には4人がけのダイニングテーブルが置かれていました。このテーブルが、私の"オフィス"になります。
海外リモートの生命線、ネットワーク環境の構築
持参したノートPC、外付けモニター、キーボード、マウスを並べていきました。テーブルが広かったおかげで、デュアルモニターの環境も問題なく整いました。
日本とほぼ同じ作業環境を、海外という非日常の中でも難なく再現できたことに、少し安心しました。
リモートワークの成否を左右する最大の要因は、ネットワーク環境です。
部屋には共有Wi-Fiがあり、速度もまずまず。ただし、会社のネットワークにアクセスするには、セキュリティの確保が絶対条件です。そのために不可欠なのが、VPN(Virtual Private Network)の存在です。
今回はExpressVPNを試験的に導入し、フィリピンサーバーに接続しました。速度の低下も感じず、快適にネットを利用できました。
Webサイトの表示やファイルのダウンロードもスムーズで、業務に支障はなさそうです。
ただし、日本国内向けサービスを利用する際は、日本サーバーへの切り替えが必要になります。海外サーバー経由ではどうしても遅延が発生しますが、ExpressVPN
はサーバーの切り替えが非常に高速で、ストレスを感じにくいのが特長です。
用途に応じてフィリピンと日本のサーバーを使い分けられるこの機動力は、今回の海外リモートワークにおける"生命線"といえるでしょう。
場所にとらわれない働き方へ、その第一歩
多少の工夫は必要ですが、業務自体は問題なく遂行できています。チャットや音声会議も滞りなく行えており、同僚たちは私がセブにいることに気づいていないかもしれません。
「場所をとらわれずに(海外で)働く」という自由は、ノマドワーカーだけの特権ではありません。組織に所属する会社員である私が、信頼関係のもとでこのスタイルを実現できたことは、一つの成果です。
もしこの試みが成功し、「どこにいても業務を遂行できる」という実績を積めたなら、それは"場所にとらわれない働き方"に向けた大きな一歩になるはずです。
これまで想像もできなかった働き方。
時代の変化、テクノロジーの進化、そしてささやかな勇気が、静かに可能性の扉を開いてくれます。
セブのコンドミニアムの一室で、私はその未来を感じながら、日々の業務をこなしています。